2022-01-01から1年間の記事一覧

犬も歩けば棒にあたるってやつだな【歩くを考える #3】

「犬も歩けば棒にあたる」という言葉が愛おしくてたまらない。 ご存知の通り、何か行動を起こそうとして、災難にあうという意味だ。 ことわざといえば?と問えば、多くの人がこの言葉を浮かべるだろう。 しかしその知名度の割に、日常会話で使うことはほとん…

「劇場」に棲みつく悲しき不器用モンスター

まぶたは薄い皮膚でしかないいはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。 もう少しで見えそうだと思ったりもするけど、眼を閉じた状態で見えているのは、まぶたの裏側の皮膚にすぎない。 あきらめて、まぶたをあげると、あたりまえのことだけれど風景…

ホーム・アディクト

独りぼっちの駅の鳩。迷子になっちゃったと気づく。 ベンチの下を右往左往。 どちらが地上かわからない。 手持ち無沙汰な駅の鳩。ただあてもなく地面つつく。 食べれるものは食べつくした。 固くて冷たい温度だけ。クチバシ伝ってやってきた。 クッキーくれ…

勘違い男の孤独のグルメ

仕事を終えて帰途につくと、ふと町の定食屋にいきたい衝動が込みあげてきた。 Google検索の末、気づくと老舗の渋い定食屋の扉に手がかかっていた。 時刻は20:30。仕事終わりのサラリーマンで溢れていてもいいはずだが、店内に客は一人もいない。話し声もなけ…

地球一周するトレイレットペーパー【歩くを考える #2】

「人が一生で歩く距離は地球一周分」と、本で読んだことがあります。 「とてつもなく長い距離を歩く」という文脈で語られていた気がしますが、最短距離で1週分なので、世界中を寄り道しながら歩き回るには時間が足りないんだよと言われているようで、私はす…

成金のひたむきさに倣え【歩くを考える #1】

成金という言葉がネガティブな意味で使われることに違和感がありました。 成金は将棋の歩兵が敵陣まで進んで「金と成る」ことに由来していますが、我々が日常で使う「成金」のイメージと、一マスずつひたむきに進んで「成った金」はまるで正反対のように思え…

逃飛行【ショートショート】

青年は部屋の隅っこの同じ場所で、毎日同じ本を読んだ。 目が覚めると、本を手にとって表紙を捲り始める。そして深夜までゆっくりと時間をかけてかけて読み終える。このルーティンを繰り返して2年が経った。 奇妙なことに毎日同じ本を読んでいるうちに、同…

コロナ限定ホームサウナ

盲目のピアニストや、アウトサイダーアートなど、身体の一部が不自由になるとその分ほかの感覚が鋭くなる、というのはよく聞く話だ。 時刻は深夜3時。私は39度の高熱にうなされながらベットに横たわっている。朝から寝通しなのでもう眠気もないが、ただマッ…

南極でペンギンを見たいので、ゴルフは引退します

ゴルフをやめると決めた。 大学1年で始めたゴルフ、惰性で続けてここまできたけど正直ハマりきれなかった。流れていく時間とお金に見合うだけの情熱を持てなかった。ゴルフって鈍る速度が速いから、やるならとことんやりたい。でも今の熱量で微妙な距離感で…

リボで払う気持ちがわかる

社会人になって、初めてまとまった給料をもらった。何を買おうか話題になったが、喜びもつかの間、3日後に迫るカードの引き落とし額を見て真顔になった。 金遣いの荒さも上には上がいる。会社同期のひとりは大量のカードとボーナス払いを駆使し、あらゆる手…

歯が浮くような名ゼリフ【ショートショート】

彼女は歯を磨いて心を整える。就職面接の前も、仕事がうまくいかない時も、カードの請求で首が回らない時も、ひとまず歯を磨いた。彼女にとって歯磨きは身を清めてストレスを発散する、一種の儀式のようだった。 家で映画を見る前にも、彼女は一連のルーティ…

彼氏はいつも予習する【ショートショート】

「旅行を彩るのは食事でも、絶景でもない。予習なんだ。」 これが彼氏の決まり文句。彼は旅行が近くと予習モードに入る。一緒に住んでいるから、そんな様子が嫌でも目に入る。 暇を見つけては、まずは地理から攻める、だとか、今日は歴史だな、とか本やネッ…

セルフィッシュ・フィッシュ②

あれから引き続き、頭を巡るのはバスのことばかりだった。 「バス サイズ 大きさ」と意味もなく同じ言葉を重ねて検索してみると、ページはユニットバスの規格で埋め尽くされ、「バス サイズ アメリカ」と入れると、アメリカの老舗靴ブランドG.H.BASSが少し顔…

セルフィッシュ・フィッシュ①

これは私が去年の11月に書いたものです。 訳のわからないことを書いていると、恥ずかしくなって下書きに葬っていたのですが、読み返すと1周回って面白い気がしたので、ここに供養します。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は自動運転分野の研究…

自分が回るのは新歓パーティくらいでいい

まさか地球が回っているのか、なんて考えたこともなかった。 最近読んでいる「チ。-地球の運動について-」というマンガがおもしろい。天動説が信じられている世界で、命をかけて地動説を研究するフィクションだ。主人公のひとりはたまたま転んだ拍子に、星が…

前髪を片付ける鶴の一声

私はお祭りに乗じて髪型を変える。 就活が終わったときは、勢いで友人たちと髪をカラフルに染め上げ、京都でシェアハウスをはじめた。5年も遅れて大学一年生のようなハジけ方をする私たちに「黒のほうがよかった」と無情な声は惜しみなく注がれたが、こちら…