【ショートショート】SUPER DISCO

 

今では空き地となった下町の一角、50年前そこにはディスコがあった。片田舎にも関わらず、連日都会に憧れる若者たちで賑わい、アース・ウィンド・アンド・ファイアーABBAの音楽が夜を彩っていた。あの時、この場所は間違いなく小さな町の熱源だった。

 

今でも、ふと気がつくと自然とここに向かってしまう。肌を刺す寒さの中に、やわらかな日差しの温度を見つけて目を閉じると、かつてのダンスホールが蘇る。

 

壁一面に並ぶカラフルなポスターがディスコボールの煌々とした光に照らされている。カウンターバーでは、カクテルメニューの横文字が躍り、前の若者たちは笑顔で何かを話している。隅の張り紙は「今夜は特別ゲストDJ!」と謳っている。今日は一層、盛り上がりそうだ。

 

「よかったら一緒に踊りませんか?」
ここに立つと、またあなたがそう言ってくれるような気がする。かつて彼と踊ったこの場所で、彼女は今も彼の声を探している。ゆっくりと瞼をあげると、「入居募集」の張り紙が乾いた風に揺れていた。

 

今夜は冷えるから、鍋にしようかしら。彼女は踵を返し、スーパーで白菜、人参、豆腐と梅干しを買って自宅に帰る。そして、いつもと同じように仏壇の前で手を合わせた。

 

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(この文章は、スナップ写真から妄想をふくらませて書いたものです)