できる男のサウナマナー
私は気遣いに定評がある。
東ニ競馬デ負ケタ人アレバ、次コソ勝テルト激励シ、
西ニ酔イ潰レル友アレバ、アト二杯デイイト云フ。
そういう者である。そんな人を思う心をもってしても、容易に判じがたい問題に直面した。
先日、先輩二人に連れられ銭湯に行った時のこと。三人でサウナルームに入ったが、座席の空きはまばらである。さて私はどこに座るべきなのか、これが問題だ。
ここに三つ選択肢がある。みなさんならどこに座るだろうか。
- 奥の低い席
- テレビ正面の低い席
- 手前の高い席(2つ横並び)
先輩は暑さを求めて、高い座席を所望するか。いや暑すぎると長くいられないかも。低い席がいいだろうか。
2つ並んで空いているところに、先輩は並んで座りたいんじゃないか。いや、サウナ内では会話しないから、テレビの見やすさ優先じゃないか。
そもそもサウナの上座ってどこなんだ。個室と同じで入り口から離れた奥の席がやはり上座なのか。いやでも、扉付近はたまに涼しい風が入ってきて気持ちいいかもしれないな。
とういうか暑さを求めてサウナにくるなら、涼しさはいらないんじゃないか。いや暑すぎると長くいられないかも。低い席がいいだろうか。
と気づかぬうちに、私は出口のない迷路をグルグル回っていた。
わずかに逡巡した末、私は以下の二点を踏まえ、奥の低い席を選んだ。
- 先輩二人はサウナ上級者なので、温度の高さを求めるだろう
- 裸眼だと何も見えない私にテレビは関係ないので、テレビ正面は空けておくべき
これで万事解決だ。
安心して奥の座席に腰を下ろしたところで、別の問題に気づいた。先輩の姿が全く見えず、出るタイミングがわからないのだ。
基本的にサウナ→水風呂→外気浴を1セットとする交代浴のルーティンは、各自が無理のないペースで行う。
とはいえ、久々に先輩と会う私は話したいことも積もっている。できれば先輩にペースを合わせたいところだ。しかし裸眼で赤ちゃん並の認識能力しかない私が、先輩から離てしまった時点でもう叶わない。
座った後でこの問題に気づくとは。裸眼の私には、わずか先の未来すら見えてなかったのだ。くそ、目さえ良ければ。熱にやられた頭と勢いで、私は決断した。
そうだ、レーシックしよう。
そんなわけで、私は先日レーシック(正確にはICL)手術を受けた。